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米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の見直しを前に、弊社公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、2025年に示した「より深い貿易統合」という見通しが今も有効かどうかについて解説します。
このエピソードを英語で聴く。 (https://mgstnly.lnk.to/yNa4SNRS)
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は、弊社公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、間もなく予定されているUSMCAの見直しについて、そして去年昨年から環境がどのように変化したのかについて、弊社の見通しを解説します。
このエピソードは2月11日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
去年昨年秋にお伝えしたとおり、米国・メキシコ・カナダ協定、いわゆるUSMCAは、2026年に初めての義務的な見直しを迎えます。当時、弊社はリスクがやや上振れ方向に傾いていると指摘しました。協定に組み込まれている構造的なセーフガードが、下振れリスクを抑え、大半のシナリオを北米における貿易統合を維持し、時間をかけて深化させる方向へと導くと考えているためです。
この枠組みは、現在も概ね維持されていると考えています。ただし、ここ数か月のいくつかの動きを踏まえると、より深い統合が実現するタイミングや構造は、当初の想定とはやや異なる可能性が出てきました。交渉担当者が個別の問題を解消し、限定的なアップデートを行うというシナリオは依然として想定していますが、AIに関する新たな章や、重要鉱物、中国の対メキシコ投資に対するより明確な歯止めといった、より野心的な幾つかの政策目標については、2026年半ばの期限までに正式な形で盛り込むことは、以前より難しくなっていると見ています。
では、去年昨年示した弊社の基本ケースは、今どのような姿を保っているのでしょうか。
弊社は引き続き、協定自体は維持され、いくつかの未解決の争点、具体的には、自動車の原産地規則、労働分野の履行手続き、そして一部のデジタル貿易規定、が解決されるという結果を予想しています。
中国に関する論点についても、去年昨年の見方は変わっていません。
メキシコは、迂回輸出のリスクを低減し、米国の貿易優先事項との整合性を高めるために、段階的な対応を進めると見ています。ただし、2026年半ばまでに、完全に制度化された執行メカニズムが導入される可能性は低いでしょう。なお、USMCAには10年ごとのエスケープ条項があり、少なくとも2036年までは協定が有効であるため、破壊的な貿易ショックが起きる確率は、構造的にかなり低いと考えられます。
変わりつつあるのは、進む方向そのものではなく、スピードと形式です。
より包括的な合意が最終的に実現する可能性はありますが、その時期は先送りされるか、あるいはUSMCA本文の改定ではなく、補足的な協定という形を取るかもしれません。当然ながら、その場合は、議会の裏付けがないことによる執行リスクが伴います。
弊社では、正式な見直しは2026年半ば頃にまとまると引き続き予想していますが、より深い制度的な統合が、さらに先の時期にずれ込む、あるいは並行的な枠組みを通じて進む可能性は、以前より高まっています。また、期限が近づく中で、3か国すべてが交渉期間の延長を決定し、不透明感がさらに長引くシナリオも考えられます。
では、こうした動きはマクロ経済や市場にとって、どのような意味を持つのでしょうか。
メキシコにとっては、引き続き、米国への無関税アクセスを維持することが極めて重要です。基本ケースでは、自動車や電子機器を中心とした製造業の統合が続くと見ています。ただし、政策当局が議論してきたような、より戦略的な新章が盛り込まれない場合、メキシコは「安定してはいるものの、本格的なニアショアリング加速には至らない」という、これまでと同様の立ち位置にとどまることになります。これは去年昨年の弊社見通しと整合的ですが、短期的には、急速なより深い制度的統合というシナリオに対するリスクが、一段と明確になってきたと考えています。
為替市場については、不確実性が低下することによる恩恵は見込まれるものの、その効果は緩やかなものになるでしょう。
原協定に目に見える形で新たな要素が加わらない場合、短期的な市場インパクトは限定的になると見ています。
カナダについても、影響は一長一短です。見直しを巡る短期的な変動リスクは、市場で十分に織り込まれていない可能性がありますが、限定的な合意は中期的に米ドル/カナダドルの下落圧力につながると考えています。
経済全体については、弊社は去年昨年、中国からのサプライチェーン分散が完全に進まなくても、この見直しは「北米を一体的な製造拠点として強化するものになる」と指摘しました。この点については、現在も基本的に変わっていないと考えています。ただし、より野心的な統合ルートの一部は、より先の時期に持ち越されるか、もしくはUSMCAの正式な章立てではなく、別の枠組みを通じて実現される可能性がある、という新たなニュアンスが加わります。
結論として、弊社の基本ケースは引き続き、「不確実性を抑えつつ、北米貿易の中核的な恩恵を維持し、主要な資産クラスの成長を支える、現実的で慎重な結果」です。
一方で、一部の戦略的な機会は当面棚上げされ、より深い連携は先送りされ、やや長い時間軸で進む、あるいはより柔軟な枠組みを通じて進むことになる可能性が高まっていると見ています。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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