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地政学的な懸念があるにもかかわらず、歴史、テクニカル要因、そしてファンダメンタルズは向こう6ヵ月間の米国株式の動向が意外に明確であることを示唆しています。弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがその理由をご説明します。
このエピソードを英語で聴く。 (https://mgstnly.lnk.to/ICW5jnRS)
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、イランでの紛争と、それが株式にとってどんな意味を持つかについてお話しします。
このエピソードは3月9日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
足元の株式市場の調整は2月に始まったとお考えの方がほとんどでしょうが、私に言わせれば、この調整が始まったのは明らかに[1] (https://d.docs.live.net/b1c97b3576a93376/Documents/2026/Sequel/TOTM/Japan/03%20-%20March/09%20-%20Wilson/EJ-translation-TOTM_2026-03-09_Wilson_Bull_Market_Resume_JPN-Script_V2.docx#_msocom_1) 去年昨年の秋、流動性がタイトになり始めたときです。実際、私は去年 9月に、FRBは自らのバランスシートを十分に活用していない、これでは金融が今後引き締まって株式市場に一定のストレスを及ぼすだろうと警鐘を鳴らしていました。翌10月に入るとそのストレスが、株式市場の最も投機的な部分と暗号通貨の急激な調整という形で顕在化しました。するとFRBはバランスシートの圧縮を予想より早く打ち切り、資産購入を再開するという対応を取りました。このことが1月の力強い株価上昇につながりました。
この調整は時間的にも株価水準的にもかなり進んだ状態にあります。現時点で30%、あるいはそれ以上下落している銘柄も少なくありません。その一方で株価の上昇率・下落率のばらつきはまれにみるほど大きく、勝ち組と負け組の間には20数年ぶりの大差がついています。市場はいつものように、今では誰の目にも明らかな懸念の多くを予見することで、歪みを正したのです。では、株式投資家がいま抱いている疑問は何か。それは6ヵ月後の世界はどうなっているのか、そしてよりよい未来を想定し始めてもよいレベルまで株価は割安になっているのか、という2点でしょう。
簡潔に答えるなら、株価はまだそこまで割安ではありません。しかし、購入したい銘柄のリストは用意しておきましょう。私たちは今いろいろな意味で、去年昨年と非常によく似た状況に置かれています。覚えていますか。去年昨年2月の終わりから3月の初めにかけて、主要な株価指数は下げ足を速め始めていました。あの時期の最大の懸念材料は関税でしたが、今日(こんにち)と同様に株式市場はすでにその前から、関税とは無関係な懸念のために数ヵ月にわたって伸び悩んでいたのです。今日の市場ではAIによる労働市場の混乱、プライベート・クレジットのデフォルト、そして流動性不足の3点が、イラン紛争がエスカレートするかなり前から懸念されています。
一般に調整局面というものは、最も優良な銘柄や株価指数が打撃を受けるまで終わりません。そして、そこに至るには、「解放の日」や戦争のようなより大きなショックが必要になるのが通例です。
そのプロセスはすでに始まっています。たとえば、S&P500は先週、10月以降で最低のパフォーマンスに終わっています。そしてもう一つ検討すべきなのは、相場のレベルは1年前の水準と結びついている場合が多いということです。この前年同期との比較は、下値支持について考えるとき非常に重要になります。
今年の急落を踏まえると、株式市場はあと1ヵ月ほどもがくことになりそうだと私には思われます。このシンプルな考察といくつかのテクニカル指標に基づいて言えば、S&P500指数は4月の初めごろまでに6300に向かう展開になりうると思われます。ファンダメンタルズの好ましい見通しが再び定着しうるのはその後になるでしょう。
では、イラン情勢によって原油価格が1バレル=100ドルを持続的に超えることを心配する必要などないのでしょうか。いや、そうではありません。軍事紛争の結果や原油価格の予想は誰にもできないと思われますので、私もあえて試みるつもりはありません。むしろ私は、ロシアによるウクライナ侵攻のときがそうだったように、あと6ヵ月たてば今のような事態も落ち着いている公算が高いのではないかと考えます。重要なのは、原油急騰の原因が供給不足によるものではなく、ホルムズ海峡で物流が阻害されている結果であることです。確かにこの物流の停滞はリアルな制約ではありますが、必要は発明の母と言いますし、解消される公算が大きいでしょう。
6ヵ月先のことについて楽観的になれる理由はほかにもあります。まず、企業収益拡大の動きが広がっています。この傾向はまだ続いており、弊社の2026年の見通しにおける重要な根拠の一つでもあります。第2に、米国はエネルギーの面で自立できており、石油ショックに耐える力がアジアや欧州よりもはるかに備わっています。この点にひかれて米国に戻ってくる投資家も出てくるでしょう。そしてもう一つ、企業の設備投資に対する税制優遇措置と、「一つの大きくて美しい法案(OBBB)」法による個人の減税が、短期的には原油高を相殺する好影響をもたらす公算が大きいことが挙げられます。不安材料を一つ挙げるとすれば、それは「質と安全への逃避」が起きて米ドル高が進行し、グローバルな流動性を低下させてしまうことです。
まとめますと、原油高と米ドル高は紛争が収束するまで続く可能性が高いでしょう。株式市場の最も脆弱な部分には、すでに大半のダメージが出尽くしている公算が大きいものの、株価指数は依然として不安定で、5~7%下落する余地がまだ残っていると私自身はみています。また機関投資家などに広く買われてきた人気銘柄の株価はこれから2桁の下げを経験する可能性が高く、来月に入って大底を打つ展開もありうるでしょう。相場の底は天井よりも早めに現れる傾向があります。強気相場の年内の再開を見据えつつ、今はリスクへの備えを進める時期だと考えます。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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